「須く(すべからく)」の誤用・意味
「すべからく」の正しい意味
○ 当然の事として。是非とも。
「すべからく」の誤った意味
×全て。皆。
須く(すべからく)の正しい意味は「当然の事として。是非とも」で、「全て。全部。皆」という意味で使うのは誤用です。
字面・読みが時代掛かった言葉なので、類義語を使った方が違和感のない文章になる場合も多々あります。
「須く(すべからく)」の使い方
使用頻度の低い語で、語尾には「べき」「べし」を付ける
「須く」は、「何かをすべき」「何かをしなければならない」「何かをする必要がある」といった文脈で用いられます。ただし、書き言葉として使われる事が多く、日常会話で使われることはあまりありません。
また、本来の用法は後に「~べき」「~べし」という言葉を伴いますが、それらの代わりに「~しなければならない」を伴って用いたり、「~べき」「~べし」「~しなければならない」を省略する人も増えてきています。
正用か誤用かが分かりにくい
もう一つ注意しなければならないのは、正用か誤用かが分かりにくい場合です。
例えば、「エスカレーターは、すべからく片側開けと歩行をせずに利用すべきだ」という文は、「当然の事として、片側開けと歩行をせずに利用すべきだ」とも「皆、片側開けと歩行をせずに利用すべきだ」とも解釈できます。
上記のように、正しい意味と誤った意味のどちらにも受け取られやすい語なのです。
ですから「須く」を使う側は、前後の言葉をよく選ぶか類義語に置き換えるかして、相手が誤解しないように注意しましょう。
「須く」を読んだり聞いたりした側は、文脈をしっかりと捉えて正用か誤用かを判断して下さい。
「須く(すべからく)」の例文
○ 成績を上げたいのならば、須く勉学に励むべし。
○ 親は、すべからく子供の健康状態に気を配るべきだ。
× 残った仕事を私に押しつけて、同僚達はすべからく帰宅してしまった。
× 彼は、図書館中にある書籍を須く読み尽くしたという。
「須く(すべからく)」の類義語・誤った意味を表す語
類義語
類義語
当然 是非とも 当たり前 いうまでもない 必須 当為 無論 為すべき
誤った意味を表す語
誤った意味を表す語
全て 全部 全員 皆 ことごとく 残らず 総じて 根こそぎ 一切合切 全体 総体 一様に あまねく おしなべて
「須く(すべからく)」の語源・由来
「須く」は「すべくあらく(すべきであることの意)」の約で、「須・応」を「すべからく~べし」と再読した漢文訓読に由来する語です。
動詞「す(する、行うの意)」に推量の助動詞の補助活用「べかり」が付いた「すべかり」が、ク語法によって「すべからく」となったため副詞的に用いられるようになりました。
※ク語法…「く」を語尾に付けて「~(する)ところ・こと・もの」という意味の名詞を作る語法。
「須く(すべからく)」の世論調査
文化庁の調査(平成22年度)では、正しい意味で用いている人の割合が41%で、誤った意味で用いている人の割合が38%でした。
若年層よりも高齢層の方が、誤用している割合が高いようです。
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