「中抜き(なかぬき)」の意味・誤用・ピンハネとの違い
「中抜き(なかぬき)」の本来の意味は「中間業者を抜かして、生産者と消費者が直接取引をする」ですから、「中間業者がピンハネする。上前をはねる」という意味で使うのは誤用です。 つまり「中抜き」の意味は、「中間業者が抜く(上前をはねる。ピンハネする)」ではなく、「中間業者を抜く(なくす)」なのです。
しかし最近は、旅行代理店・卸売業者・派遣会社などの中間業者を、☓の意味で「中抜き業者」「中抜き企業」と呼ぶ人が増えてきています。一方「中抜き現象」は、○の意味「中間を抜かして直接取引をする」で使われています。
また、「中間業者が抜く」と「中間業者を抜く」は反対の意味ですから、「中抜き」を使う側と聞く・読む側のどちらかが誤った認識だと、真逆の意味で伝わってしまいます。 そうした誤解を避けるためには、前後の言葉をしっかり選ぶか、類義語に言い換えるようにしましょう。
ピンハネ(ピン撥ね)の意味・語源
ピンハネの語源は、ポルトガル語の「pinta(点の意味)」という説があります。
日本では、賭博に使われるカルタの札や賽の目などの一をピンと呼ぶになりました。そこからピンは「一部・一割」を意味するようになり、更に「賃金・代金の一部か一割。上前」の意味が加わり、「ピンをはねる(賃金・代金の一部か一割をかすめ取るの意)」という言い回しを「ピンハネ」と略すようになったと考えられています。
「誤っているとされている意味は昔からあった」という指摘もある
「中抜き」は「中間業者を飛ばす」が本来で「中の者が中間マージンを取る」は誤用だという議論がSNSで盛り上がっていますが、2000年の時点での朝日・読売・毎日の記事を見ると、どちらもあります。「スリが財布の中身を中抜きする」の意味もあり、「昔からいろいろあった」と考えておきます。 https://t.co/7feYaB29dS
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) July 25, 2021
流通の報道では「中間業者を飛ばす」意味の「中抜き」がよく使われます。一方、〈住専返済で1億数千万円「中抜き」、不動産会社元社長らを書類送検へ〉(毎日2000.3.14 西部)など社会面では「差額をだまし取る」意味で使われます。別分野で使われていたことばが、それぞれ一般化したのでしょう。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) July 25, 2021
「中抜き」を使った例文・使い方
「中抜き」は「中貫き」と表記することもできます。また、「中を抜き取る」「中間を省略する」「植物を間引いた後で再度間引くこと」という意味でも使われますが、○の「中間を抜かして直接取引をする」の意味で使われることが殆です。
※☓の「中抜き」は誤りで、「ピンハネ」「上前をはねる」が正しい。
「中抜き」の類語・言い換え表現・誤った意味を表す言葉・英語表現
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