「舌先三寸」の誤用・意味・使い方
○ 舌先三寸(したさきさんずん)
× 口先三寸(くちさきさんずん)
□ 意味…口先だけで上手く言いくるめたり騙したりすること。また、その言葉。
本来の言い方が「舌先三寸」なので、「口先三寸」という言い方は誤用です。
「先」を省略して「舌三寸(したさんずん)」と用いられることもあります。
あまり使われる事がない「舌先」とよく使われている「口先」が混同されたため、誤った言い方が広がったと考えられます。
文化庁が行っている「国語に関する世論調査(平成23年度)」では、正しい言い方を選んだ人の割合が23.3%、誤った言い方を選んだ人の割合が56.7%という結果が出ています。この調査で年齢が上がるにつれ誤用の割合が上がることも分かりました。
「舌先三寸」の使い方・例文
「舌先三寸」は、巧みな弁舌を褒める意味合いでは使えず、うわべだけの上手い物言いを非難する意味合いで使う語です。多くの場合、「口先だけで上手く言いくるめたり騙したりしようとする人。また、その言葉」に対して非難する意味で使われています。
ですから「巧みな弁舌ですね」と褒める意味で使ったとしても、相手に「うわべだけの上手い物言いと非難された」と捉えられてしまうので注意してください。
■ 先日、祖父が訪問販売業者に舌先三寸で言いくるめられ、高級布団を買わされたと聞かされた…。
■ Kはいつも立派な事を言っているが、内容に具体性がないので口先三寸の物言いとしか思えない。
■ そういう風に口先三寸で誤魔化してばかりいると、誰からも相手にされなくなるぞ!!
■ 市長は舌先三寸の人間だから、市役所の移転問題でもギリギリまで上手くあしらうような事しか言わなかった。
「舌先三寸」の由来・語源
「舌先三寸」は、司馬遷(しばせん)が編纂した「史記(しき)・列伝」が出典の故事成語です。
中国の戦国時代、秦の大軍に取り囲まれた趙の国が、強国の楚と連合関係を結ぶために使者の平原君を向かわせました。そして、平原君が楚王との交渉に連れていった毛遂は、「この交渉は楚のためのものだ」などと巧みな弁舌を振るい同盟を成功させました。
楚から援軍が派遣されたため趙は滅亡を免れ、平原君は「毛遂先生の舌先三寸は百万の軍勢に勝っている」と言ったといいます。
後に日本では「舌先三寸」を、「口先だけで上手く言いくるめたり騙したりすること」という軽薄な意味で使うようになりました。
「舌先三寸」の類義語
■ 巧言(こうげん)…誠実さのない口先だけのうまい言葉。言葉を飾って、巧みに言い回すこと。
■ 甘言(かんげん)…相手が気に入るような口先だけのうまい言葉。
■ 美辞麗句(びじれいく)…うわべだけを美しく飾り立てた言葉。美しい言葉・文句。
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