「愛想(あいそ・あいそう)」
「愛想」の意味・使い方
愛想
○1.好感を与えるような態度。
○2.機嫌をとるための言動・仕草。
○3.客などに対するもてなし。
○4.人に対する信頼や親しみの気持ち。
○5.飲食店などで請求する勘定(多くは「お愛想」の形で使われる)。
「愛想(あいそ・あいそう)」は、「意識して好感を与える態度・言動」を表しています(○1~3の意味)。
そういう意識した態度・言動は、人が元々持っている好ましさ(性格・性質)とは違う表面的なものです。
つまり「愛想」の○1~3の意味は、「意識的に好感を与える」と「表面的な態度や言動」の条件を満たした場合に使う事ができます。
「愛想」には、「人に対する信頼や親しみの気持ち」という○4の意味もあります。この意味は、「愛想を尽かす(信頼や親しみの気持ちがなくなるの意)」という形での使われ方が多いです。
また、「飲食店などで請求する勘定」という○5の意味でも用いられます。
店側が「お愛想がなくて申し訳ありません」と謝りながら勘定書を出した事から、「お愛想」は勘定を意味するようになりました。ですから、客側が「お愛想」という言葉を使うと、「愛想がない店だから、早く精算してほしい」と批判する意味になってしまうのです。
「愛想」の慣用句・言い回し
慣用句
○愛想笑い(意味…人の機嫌を取ろうとするための笑い)
○愛想が尽きる(意味…好意や信頼がなくなってしまう)
○愛想を尽かす(意味…好意や信頼を捨てる。見限る)
正誤の判断が難しい用法
△愛想を振りまく(意味…周囲の人みんなに、にこやかな態度をとる)※1
※1長らく誤用とされてきたが、複数の辞書に意味が記載された。また、辞書編集者の飯間浩明さんは、ブログで「愛想を振りまく」の古い用例を多く挙げている。
言い回し
○ 愛想を言う
○ 愛想の良い・悪い
○ 愛想がない
○お愛想お願いします
○お愛想がなくて申し訳ありません
誤った言い回し
×愛想たっぷり
×ご愛想に~(例.ご愛想にもう一曲)
「愛想」の例文
○居酒屋で店員に「お愛想お願いします」と言ったら、何故か苦笑された。
○ 先生は遅刻魔のBに愛想が尽きたのか、あまり注意をしなくなり淡々と接するようになった。
○人間関係を円滑に進めるために、職場では愛想笑いで自分を偽ってきた。
○その店は店員の愛想が悪いから行かない方がいいよ。
「愛嬌・愛敬(あいきょう)」
「愛嬌」の意味・使い方
愛嬌
○1.にこやかで、親しみやすいかわいらしさ。
○2.好ましさや、ひょうきんさのある表情や仕草。憎めない表情や仕草。
○3.相手を喜ばせるような言葉使い・態度。
○4.その場限りの冗談や戯れごと。座興。
「愛嬌(あいきょう)」は、人に元々備わっている好ましさ(性格・性質)が、無意識的に好感を与える様子を表しています(1~3の意味)。
そうした様子は、意識して好感を与える態度・言動とは違う内面的なものです。
つまり「愛嬌」の○1~3の意味は、「人に元々備わっている内面的な好ましさ(性格・性質)」と、「無意識的に好感を与える様子」の条件を満たした場合に使うことが出来ます。
○4の意味は「ご(お)」をつけて用いられる事が多く、へりくだった気持ちを意味しています。
「愛嬌」の慣用句
愛嬌を振りまく(意味…周囲の人みんなに、にこやかな態度をとる)
△愛嬌笑い(意味…人の機嫌を取ろうとするための笑い)※1
※1.一部の辞書に意味が載っている
「愛嬌」の言い回し
言い回し
○ 愛嬌のある・ない
○ 愛嬌たっぷり
○ご愛嬌に~(例.ご愛嬌にもう一曲)
誤用
×愛嬌を言う
×愛嬌が良い・悪い
×愛嬌が尽きる
×愛嬌を尽かす
×ご愛嬌お願いします
×お愛嬌がなくて申し訳ありません
「愛嬌」の例文
○ 昨日、動物園で見たパンダは、愛嬌を振りまいて来園客を魅了していた。
○5歳になる次男はイタズラ好きだが、愛嬌たっぷりに微笑むのでついつい許してしまう。
○高校の同窓会に言ったのだが、やはり愛嬌のある女性は殆ど結婚していた。
○へたな歌でお聞き苦しいとは思いますが、ご愛敬という事でお許しください。
「愛想」と「愛敬」の違い
「愛想」は意識的に好感を与える態度や言動のことで、「愛嬌」は無意識的に好感を与える様子のことです。
「愛想」の態度・言動は意図して作るものですが、「愛嬌」の様子は意図せずとも自然に現れてきます。
「愛想」は表面上の態度や言動を指し、「愛嬌」は内面の性格や性質を指しているともいえます。
「愛想」と「愛敬」の類義語
愛想の類義語
「人当たりが良い」「親愛」「信頼」「もてなし」
愛敬の類義語
「好ましい」「かわいらしい」「憎めない」「愛らしい」「親しみやすい」
「愛想」と「愛嬌」の英語表現
愛想の英語表現
amiability(愛想)
愛嬌の英語表現
charms(愛嬌)
「愛嬌」の語源
「愛嬌」の語源は、仏教用語の「愛敬相(あいぎょうそう)」です。
「愛敬相」は「仏様の優しく穏やかな表情や容貌、態度」という意味の言葉で、「愛敬(あいぎょう…親愛や尊敬の気持ちを持つの意)」の形に変わり、室町時代以降に清音化しました。
そして次第に「敬う」という意味が薄れていき、「かわいらしい、愛らしい」という意味が強くなっていきます。近代以降に「嬌(かわいらしいの意)」の字が当てられ、「愛嬌」という形になりました。
まとめ
ポイント
・「愛想」は意識的に好感を与える態度や言動のこと
・「愛嬌」は無意識的に好感を与える様子のこと
・「愛想」の態度・言動は意図して作るもの
・「愛嬌」の様子は意図せずとも自然に現れてくる
・「愛想」には、「人に対する信頼や親しみの気持ち」「飲食店などで請求する勘定」という意味もある
・「愛嬌」には、「その場限りの冗談や戯れごと」という意味もある
・「愛想」を含む慣用句は、「愛想笑い」「愛想が尽きる」「愛想を尽かす」
・「愛嬌」を含む慣用句は、「愛嬌を振りまく」
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