文化庁が毎年度調査している「言い方の誤用」を一覧にしてみました。意味や誤用の割合についても簡潔に記しています。
下記「~を選んだ割合」は、「国語に関する世論調査」のパーセンテージです。
愛嬌を振りまく
○愛嬌を振りまく(あいきょうをふりまく) |
△愛想を振りまく(あいそうをふりまく) |
□「愛嬌を振りまく」の意味…周囲に、好感の持てる態度・言動を取ること。
□「愛想を振りまく」はこれまで誤用とされてきましたが、最近では複数の辞書に正しい使い方として記載されています。ただし、まだ誤用扱いされる場合も多いので、試験や公の場では使用に注意してください。
□○を選んだ割合49.1%、△を選んだ割合42.7%【平成27年度調査】
青田買い
○青田買い(あおたがい) |
×青田刈り(あおたがり) |
□「青田買い」の意味…企業が優れた人材を確保するため、卒業予定の学生に早くから内定を出すこと。
□○を選んだ割合47.6%、×を選んだ割合31.9%【平成26年度調査】
明るみに出る
○明るみに出る(あかるみにでる) |
×明るみになる(あかるみになる) |
□「明るみに出る」の意味…隠されていたことが公になる。
□○を選んだ割合44.1%、×を選んだ割合43.0%【令和2年度調査】
足をすくわれる
○足をすくわれる(あしをすくわれる) |
△足下をすくわれる(あしもとをすくわれる) |
□ 「足をすくわれる」の意味…相手に隙を付け込まれて、失敗させられる。
□三省堂国語辞典の編纂者の飯間浩明氏は、「足下」には足の下部という意味が含まれるため「足下をすくう」は誤用ではないとの見解を示しています。また、三省堂国語辞典など数種類の辞書には「足下をすくう」が記載されています。
ただし、誤用と判断される場合も少なくないので、テストの解答などでは注意して下さい。
□○を選んだ割合26.3%、△を選んだ割合64.4%【平成28年度調査】
怒り心頭に発する
○怒り心頭に発する(いかりしんとうにはっする) |
×怒り心頭に達する(いかりしんとうにたっする) |
□「怒り心頭に達する」の意味…凄まじい怒りが込み上げてくる。
□○を選んだ割合23.6%、×を選んだ割合67.1%【平成24年度調査】
石にかじりついても
○石にかじりついても(いしにかじりついても) |
×石にしがみついても(いしにしがみついても) |
□「石にかじりついても」の意味…是が非でもも耐えて。
□○を選んだ割合66.5%、×を選んだ割合23.0%【平成20年度調査】
上を下への大騒ぎ
○上を下への大騒ぎ(うえをしたへのおおさわぎ) |
×上や下への大騒ぎ(うえやしたへのおおさわぎ) |
□ 「上を下への大騒ぎ」の意味…大勢の人々が慌てふためき混乱しているさま。
□○を選んだ割合22.5%、×を選んだ割合60.8%【平成27年度調査】
押しも押されもせぬ
○押しも押されもせぬ(おしもおされもせぬ) |
×押しも押されぬ(おしもおされぬ) |
□ 「押しも押されもせぬ」の意味…実力があり揺るぎない。
□○を選んだ割合41.5%、×を選んだ割合48.3%【平成24年度調査】
汚名返上
○汚名返上(おめいへんじょう) |
○汚名挽回(おめいばんかい) |
□「汚名返上」の意味…汚名を受ける前の、元のよい状態を取り戻す。
□挽回には「悪い状態を元に戻す」という意味があります。また、汚名挽回の用例は120年以上前にも遡れて、多くの採集がされています。
□まだまだ誤用だと考える人も多いので、公で発言する時などには注意しましょう。
□「汚名返上」を選んだ割合38.3%、「汚名挽回」を選んだ割合44.1%【平成16年度調査】
お眼鏡にかなう
○お眼鏡にかなう(お眼鏡にかなう) |
×お目にかなう(おめにかなう) |
□ 「お眼鏡にかなう」の意味…目上の人に力量を認められる。
□○を選んだ割合45.1%、×を選んだ割合39.5%【平成20年度調査】
噛んで含めるように
○噛んで含めるように(かんでふくめるように) |
×噛んで含むように(かんでふくむように) |
□ 「噛んで含めるように」の意味…きちんと理解できるように、気を配って言い聞かせる。
□○を選んだ割合50.5%、×を選んだ割合31.9%【令和元年度調査】
声を荒らげる
○声を荒らげる(こえをあららげる) |
×声を荒げる(こえをあらげる) |
□「声を荒らげる」の意味…声の語気を荒々しくする。
□○を選んだ割合11.4%、×を選んだ割合79.9%【平成22年度調査】
古式ゆかしく
○古式ゆかしく(こしきゆかしく) |
△古式豊かに(こしきゆたかに) |
□ 意味…伝統的なやり方にのっとった様子で。
□新明解国語辞典など辞書によっては「古式豊かに」を記載しており、誤用と完全に言い切れなくなってきました。
□試験や面接では誤用扱いされるかもしれないため、使用には気を付けてください。
□○を選んだ割合67.3%、△を選んだ割合15.2%【平成22年度調査】
言葉を濁す
○言葉を濁す(ことばをにごす) |
×口を濁す(くちをにごす) |
□「言葉を濁す」の意味…言いにくい事を言うときなどに、曖昧に言う。
□○を選んだ割合74.3%、×を選んだ割合17.5%【平成28年度調査】
采配を振る
○采配を振る(さいはいをふる) |
×采配を振るう(さいはいをふるう) |
□「采配を振る」の意味…先頭で指図する。
□○を選んだ割合32.2%、×を選んだ割合56.9%【平成29年度調査】
舌の根の乾かぬうちに
○舌の根の乾かぬうちに(したのねのかわかぬうちに) |
×舌の先の乾かぬうちに(したのさきのかわかぬうちに) |
□ 意味…言った後か言い終わらないうちに。
□○を選んだ割合60.4%、×を選んだ割合24.4%【平成30年度調査】
舌先三寸
○舌先三寸(したさきさんずん) |
×口先三寸(くちさきさんずん) |
□ 意味…口先だけで思いがこもっていないこと。
□○を選んだ割合23.3%、×を選んだ割合56.7%【平成23年度調査】
食指が動く
○食指が動く(しょくしがうごく) |
×食指をそそられる(しょくしをそそられる) |
□ 「食指が動く」の意味…物事への欲求や興味が起こること。
□○を選んだ割合38.1%、×を選んだ割合31.4%【平成23年度調査】
白羽の矢が立つ
○白羽の矢が立つ(しらはのやがたつ) |
×白羽の矢が当たる(しらはのやがあたる) |
□ 意味…大勢の中から特に選び出されて指名される。
□○を選んだ割合75.5%、×を選んだ割合15.1%【平成29年度調査】
新規蒔き直し
○新規蒔き直し(しんきまきなおし) |
×新規蒔き返し(しんきまきかえし) |
□「新規蒔き直し」の意味…あらためて、もう一回新しくやり直すこと。
□○を選んだ割合42.7%、×を選んだ割合44.4%【令和元年度調査】
心血を注ぐ
○心血を注ぐ(しんけつをそそぐ) |
×心血を傾ける(しんけつをかたむける) |
□「心血を注ぐ」の意味…全身全霊で物事にあたる。
□○を選んだ割合64.6%、×を選んだ割合13.3%【平成19年度調査】
寸暇を惜しんで
○寸暇を惜しんで(すんかをおしんで) |
×寸暇を惜しまず(すんかをおしまず) |
□ 意味…少しの暇でも有効に活用する。
□○を選んだ割合38.1%、×を選んだ割合43.5%【令和2年度調査】
雪辱を果たす
○雪辱を果たす(せつじょくをはたす) |
×雪辱を晴らす(せつじょくをはらす) |
□ 意味…やり返すことで恥を除き去ること。
□○を選んだ割合38.3%、×を選んだ割合50.5%【令和元年度調査】
そうは問屋が卸さない
○そうは問屋が卸さない(そうはとんやがおろさない) |
×そうは問屋が許さない(そうはとんやがゆるさない) |
□ 「そうは問屋が卸さない」の意味…そのように簡単にいくものではない。
□○を選んだ割合70.4%、×を選んだ割合23.6%【平成27年度調査】
存亡の機
○存亡の機(そんぼうのき) |
×存亡の危機(そんぼうのきき) |
□「存亡の機」の意味…滅びるか否かの重要な時。
□○を選んだ割合6.6%、×を選んだ割83.0%【平成28年度調査】
出る杭は打たれる
○出る杭は打たれる(でるくいはうたれる) |
×出る釘は打たれる(でるくぎはうたれる) |
□ 「出る杭は打たれる」意味…才覚を見せる者は憎まれる。
□○を選んだ割合73.1%、×を選んだ割合19.0%【平成18年度調査】
伝家の宝刀
○伝家の宝刀(でんかのほうとう) |
×天下の宝刀(てんかのほうとう) |
□ 意味…いざという場合以外に使用しないもの。
□○を選んだ割合54.6%、×を選んだ割合31.7%【平成24年度調査】
天地神明
○天地神明に誓って(てんちしんめいにちかって) |
×天地天明に誓って(てんちてんめいにちかって) |
□ 意味…ありとあらゆる神々に誓って。
□○を選んだ割合32.1%、×を選んだ割合53.7%【平成30年度調査】
取りつく島もない
○取りつく島もない(とりつくしまもない) |
×取りつく暇もない(とりつくひまもない) |
□ 意味…話したり交渉したりするきっかけが掴めないさま。
□○を選んだ割合47.8%、×を選んだ割合41.6%【平成24年度調査】
寝覚めが悪い
○寝覚めが悪い(ねざめがわるい) |
×目覚めが悪い(めざめがわるい) |
□ 意味…過去の良くない行いを思いだし、良心の呵責にとがめられる。
□○を選んだ割合37.1%、×を選んだ割合57.9%【平成27年度調査】
熱に浮かされる
○熱に浮かされる(ねつにうかされる) |
×熱にうなされる(ねつにうなされる) |
□ 意味…他のことを忘れてしまい夢中になる。
□○を選んだ割合57.2%、×を選んだ割合27.1%【平成26年度調査】
のべつ幕無し
○のべつ幕無し(のべつまくなし) |
×のべつくまなし(のべつくまなし) |
□「のべつ幕無し」の意味…絶えず続くさま。
□○を選んだ割合42.8%、×を選んだ割合32.1%【平成23年度調査】
腹に据えかねる
○腹に据えかねる(はらにすえかねる) |
×肝に据えかねる(きもにすえかねる) |
□ 意味…怒りを抑制できない。
□○を選んだ割合74.4%、×を選んだ割合18.2%【平成17年度調査】
火を見るよりも明らか
○火を見るよりも明らか(ひをみるよりもあきらか) |
×火を見るように明らか(ひをみるようにあきらか) |
□意味…疑う余地のないほど道理が明らかなさま。
□○を選んだ割合71.1%、×を選んだ割合13.6%【平成20年度調査】
二つ返事
○二つ返事(ふたつへんじ) |
×一つ返事(ひとつへんじ) |
□「二つ返事」の意味…快く即座に承諾する。
□○を選んだ割合52.4%、×を選んだ割合37.4%【令和2年度調査】
物議を醸す
○物議を醸す(ぶつぎをかもす) |
×物議を呼ぶ(ぶつぎをよぶ) |
□「物議を醸す」の意味…論議・批評を引き起こす。
□○を選んだ割合58.0%、×を選んだ割合21.7%【平成23年度調査】
間が持てない
○間が持てない(まがもてない) |
△間が持たない(まがもたない) |
□「間が持てない」の意味…空いた時間を、どうしたらいいか分からない。対処の仕方が分からず、会話をつなげない。
□三省堂国語辞典(第七版)など、「間が持たない」を記載する辞書も一部あります。ですが、まだまだ誤用扱いされることも多いので、テストや面接での使用には注意してください。
□○を選んだ割合29.3%、△を選んだ割合61.3%【平成22年度調査】
目から鱗が落ちる
○目から鱗が落ちる(めからうろこがおちる) |
×目から鱗が取れる(めからうろこがとれる) |
□「目から鱗が落ちる」の意味…ある事がきっかけで突如事態がよく見え、理解できるようになる。
□○を選んだ割合80.6%、×を選んだ割合8.7%【平成19年度調査】
溜飲を下げる
○溜飲を下げる(りゅういんをさげる) |
×溜飲を晴らす(りゅういんをはらす) |
□「溜飲を下げる」の意味…不満・不平などが消えて気をよくする。
□○を選んだ割合37.4%、×を選んだ割合32.9%【平成29年度調査】
論陣を張る
○論陣を張る(ろんじんをはる) |
×論戦を張る(ろんせんをはる) |
□「論陣を張る」の意味…きちんと論理を組み立てて議論を進める。
□○を選んだ割合29.5%、×を選んだ割合44.0%【平成30年度調査】
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