「敷居が高い(しきいがたかい)」の誤用の理由・意味が変わった
「不義理なことがあって、相手の家に行き難くなる」が「敷居が高い(しきいがたかい)」の本来の意味で、「高級過ぎたり格が高かったりして入りにくい。近寄りにくい」「達成するのが困難。気軽に挑戦できない」という意味で使うのは、長らく誤用だとされてきました。
しかし近年、『三省堂国語辞典 第7版』には「近寄りにくい」、『広辞苑 第七版』には「高級だったり格が高かったり思えて、その家・お店に入りにくい」という意味が記載されました。ですから完全に誤用扱いはできなくなりましたが、まだ一部の辞書に載っただけですので誤用扱いする人も多くいます。相手によっては言い換え表現を使った方がいい場面もあるでしょう。
また、単に「達成するのが困難。気軽に挑戦できない」という×の意味で使われ始めたのは1980年以降で、この意味を載せているのは『三省堂国語辞典 第7版』だけです。戦前から使われていた「高級だったり格が高かったりして入りにくい。近寄りにくい」という△の意味とは分けて考えた方がいいと思います。敷居が低いという言葉も使われ始めたのは1970年代で、『三省堂国語辞典 第7版』以外の辞書に記載はありません。
「敷居が高い」の使い方
○の「不義理なことや不面目なことがあって、相手の家に行き難くなる」の意味は、「お世話になった人に長い間連絡を取っていない」「物やお金を借りたのに返していない」「迷惑を掛けたことがある」など、何か負い目を感じていて訪ねにくい場合に使います。
△の「高級だったり格が高かったりして入りにくい。近寄りにくい」の意味は、庶民的ではない高級店や普段目にする機会のない豪邸など、思わず尻込みしてしまうような店や家に対してよく使われます。他には、単に近寄りにくいという意味でも使われています。
「敷居が高い」の例文
○ 「不義理なことや不面目なことがあって、相手の家に行き難くなる」の意味で用いた例文
△「高級だったり格が高かったりして、お店に入り難い。近寄りにくい」の意味の意味で用いた例文
×「達成するのが困難。ハードルが高い」の意味で用いた誤用例
「敷居が高い」の類語・言い換え表現、「ハードルが高い」「高級」など
○ 「不義理なことや不面目なことがあって、相手の家に行き難くなる。また、その人に会い難くなる」の意味の類義語
△「格が高かくて、お店に入り難い。近寄りにくい」の意味の類義語
×「達成するのが困難」の意味で使える言い換え表現
「敷居が高い」の語源・由来
敷居は、門や玄関の下に設置された内外を仕切る横木、もしくは引き戸・障子・襖の下に設置された溝がある横木のことです。 家に入るときには敷居を跨がなければなりませんが、不義理を働いた相手の家に入るのは躊躇してしまいます。そうした気まずい心理状態を敷居が高くて入りにくい事に例えたのが、この言葉の語源になっています。
また、最近まで誤用とされてきた意味「高級過ぎたり格が高かったりして、お店に入り難い。近寄りにくい」は戦前から使われており、「ハードルが高い」の意味は1980年代から使われ始めたようです。 「敷居が低い」は「敷居が高い」の誤用から派生した言葉で、その用例は1970年代まで遡れます。
世論調査の結果
令和元年に文化庁が行った国語に関する世論調査では、「敷居が高い」を「相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」の意味で使う人の割合が29.0%だったのに対し、「高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい」の意味で使う人の割合が56.4%でした。
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